普及を目指す新たな介護技術
代表的な移動・移乗技術紹介
持ち上げない移動・移乗技術
~介助者の腰痛を防ぎ利用者の自立を支援~
ベッド上での上方移動
仰臥位から側臥位への体位変換
ベッドから車いすへの移乗
ベッドと車いすの間にトランスファーボードを置きます。
介助者は利用者の横に座り(前から介助する方法もあります)、車いすへの移乗を介助します。
ベッドからストレッチャーへの移乗
全介助を必要とする利用者の場合です。利用者をシーツでくるむようにし、肩、殿部、下肢にトランスファーボードを挿入します。
シーツで利用者を包み込み、介助者4(2~4)人でストレッチャーに移乗します。
褥瘡予防の小枕の移動
1.褥瘡予防の小枕の移動とは
ペヤ・ハルヴォール・ルンデは、定期的に最低2時間毎の体位変換を行う以外に、小枕をマットレスの下に差し入れることによって、身体に荷重のかかる場所を移動させて褥瘡を予防することを「褥瘡予防の小枕の移動」と名づけています。
小枕はマットレスの下から挿入し、身体の6箇所を順次、移動させます。訪室した者は、移動順のルールに従い必ず次の部位に小枕を移動させます。
褥瘡予防の小枕の移動
<小枕を挿入した写真>
- 素材は滑る素材を使用すると出し入れが容易になり、鮮やかな色は挿入部位が一目でわかる。
- 小枕の素材は、100円ショップで販売されているナップザックの活用が有効。
中にバスタオルを畳んで、2分の1くらいの深さまで入れ、口紐を結ぶ。
ナップザックが手提げタイプになるものは、手提げ部分の紐を持って容易に小枕をマトレスの下から引き抜くことができるので便利。
2.小枕の移動の実施とその効果
高齢者総合福祉施設における「褥療予防の小枕の移動」の実践結果について調査を行い、技術の効果を検証し学会に報告しました。
【要旨】
本研究は、A高齢者総合福祉施設における「褥瘡予防の小枕の移動」の実践結果について調査を行い、技術の効果を検証した。報告された7事例は、全員がターミナルケアの対象者で、要介護5、平均年齢94.0 ± 4.0歳、「小枕の移動」の平均実施日数は98.0 ± 72.5日など、褥瘡発症の危険性が極めて高い事例であった。しかし、同施設では、7名中5名は死亡時まで褥瘡が発生せず、「小枕の移動」実施前に発赤が見られた2名も、発赤が消退、あるいは発赤が改善するといつた結果を得ていた。この結果から、2時間毎の体位変換と「小枕の移動」を併用することにより、体圧分散が頻回に図られ、褥瘡の予防や改善につながつたものと考える。
また、「小枕の移動」技術が褥瘡予防のみならず、職員が頻回に訪室することによる利用者への心理的サポートや職員の観察力などの向上にも資することが示唆された。